未来をつくる


武蔵野市の現状は、財政力指数が 1.515(2019)、1.520(2020)、1.484(2021)という財政的豊かさで全国トップレベル。道路がメンテされなくて困るだとかいうこともない。最近有名な明石市の所得制限なしの医療費無償化も明石市と同時期に始めていたし、市民参加は1971年のコミュニティ構想から育まれ続けている。そういう状況では、先進的・社会実験的な施策に挑戦するのは武蔵野市の一つの役割ではないだろうか。切り拓く地方自治であり続けよう。

 

予防で健康に

2023年4月以降、新型コロナワクチンの有料化されるかもしれない。また、2021年11月、HPV(子宮頸がんを始め、肛門がん、膣がんなどのがんや尖圭コンジローマ等多くの病気の発生に関わるウイルス)ワクチン接種を積極的な勧奨を差し控えている状態を終了させることとなった。誰でもワクチンを接種できるように無償化または補助を行うことが妥当だ。HPVワクチンについては性別で別けることがないことが重要だ。また、家に居る時間が増えた昨今、フレイルになりやすい状態がある。何かのたびに運動ができる機会を作っていくことで元気に生活ができることが望ましい。

 

共生社会と学校

2022年9月、国連障害者権利委員会から「日本はインクルーシブ教育についてちゃんとやりなさい」と勧告があった。既にインクルーシブ教育を実施している国はいくつもあるので日本ができないわけではない。インクルーシブ教育は子どもたちの権利で、武蔵野市の目指す地域共生社会を実現するには必要な仕組みだ。現状はどうなっているかというと、日本は分離教育だ。普通教室とは別の場所で手厚いサポートがある。そのためか、国連勧告に対して当事者たちから「今の普通教室に放り込まれたらたまらん」という反対の声もあった。国がインテグレーション(統合)とインクルーシブ(包括)の違い、障害の医学モデルと社会モデルの違いを説明しないからだろう。これでは共生社会など無理だ。インクルーシブ教育について詳しくは他を参照してもらいたい。

これから絶対に必要となるインクルーシブ教育なのだが、現状ではそう簡単には実現できない。普通教室が変わらないといけない、教材が変わらないといけない、すべての子どもたちが学べる環境を作らないといけない。課題がたくさんある。例えば、まずは20人程度の少人数学級制度の導入が必要だ。ロードマップを作るところから始めないといけない。

 

少人数学級

2021年3月2日、国の号令のもと武蔵野市でも新型コロナウイルス対策のための臨時休校が始まった。6月1日からはクラスの半数の子どもたちが登校する分散登校がおこなわれた。当時のクラスはまさに20人という少人数学級を体験したことで、教育活動・教員のワークライフバランスがどうだったか今からでも振り返りをおこなえば立派な社会実験といえる。個人的には「よかった」という教職員の評価を聞いている。

実は教員の人数は一学級あたりの児童生徒数によって決められていて、簡単には計算式を変えることはできない。2020年に萩生田文科大臣(当時)が小中学校で30人学級をやるぞ!と意気込んだ際には、30人学級を前提とすることは叶わなかったものの一学級の児童数が40人→35人になったということがあった。これが約40年ぶりの計算式の変更だった。では、各自治体はどうやって教員の数を増やしているかといえば都道府県ごとの加配で行っている。これを武蔵野市独自に加配しようと思うと財政との兼ね合いもありずっと続けられるかは未知数。また市採用と都採用だと待遇の違いや勤務できる学校の違いなどが生じる。だから武蔵野市だけの力で教員を増やすのはかなり難しく、東京都に教員増やそうぜ!と働きかけをしないといけない。武蔵野市議会や市長、他自治体の方々から都に要望していってもらいたい。

 

子どもたちの多様な学びの場

日本の小中学生の不登校の人数は伸びに伸び24万人を超えた、中学生は20人に1人が不登校となっている。当然学びは保障しなければいけないので登校できるようにさまざまな対応をするが、一方で学校以外の学びの機会を作ることによって学びの保障をすることができる。武蔵野市ではチャレンジルームやクレスコーレなどがあるが、民間のフリースクールや不登校特例校での学びの保障も考えるべきだ。もう一つ忘れてはいけないのが少人数学級だ。現状のクラス規模では人が多すぎて教室に入れない子もいると聞いている。

 

児童館(機能)を3駅圏に

多様な学びの場もそうだが、子どもの居場所もいろいろあってほしい。特に児童館はよく考えられた国のガイドラインまである子ども中心の施設だ。学校でもない家庭でもない自分らしくいられる第3の居場所が必要だ。子どもたちにとって安心して話せる大人がいることがいざというときに助けになるだろう。

また国は子ども家庭庁を作るにあたり中高生の居場所としても児童館の活用を考えている。国のこの動きは歓迎したい。武蔵野市が中高生の居場所として設定しているのはプレイスしかない。武蔵野市は桜堤に1館しかない。少なくとも3駅圏に1館あったほうがいいのではないだろうか。

 

誰もが図書につながれる図書館機能の充実

インターネットが便利な世の中でも本の存在はまた別で考えた方がいい。図書館まで行くのが難しい方でも本や司書サービスに繋がれる仕組みを構築できないだろうか。予約した本の受け取り方と返却のしかた、工夫できるところはまだあるはずだ。

 

平和

武蔵野市では第六期長期計画(最上位計画)で初めて平和が大見出しに入った。どれだけこれが重要なことかというと、憲法でも平和主義が位置づけられていたり、全ての国民が受ける義務教育の究極の目的(教育基本法第1条)が平和というくらい重要だ。なんとなく平和だったらいいなというものじゃない。武蔵野市には第二次世界大戦時はゼロ戦のエンジンを製造している中島飛行機武蔵製作所があったことから9回の空襲を経験している。また戦争の跡もあったり、大人も子どもも歴史を活かした平和学習をできる状況にある。二度と戦争をしないように学び続けなければならない。

 

多様性・多文化・共生が強みになる

多様性・多文化が共生すると知見は豊かになりイノベーションにより生活も豊かになる。逆にエコーチェンバーのような同一性の強い集団は認め合うことが容易で過ごしやすい環境になるが、視点が少なく発想も貧弱な弱い集団となってしまう。混ざりあって豊かな武蔵野市になろう。

 

デジタル生活水準の向上とデジタルディバイド対策

民間サービスと比べて行政サービスのICT導入がかなり遅れている。サービス受益者の利便性が公だからといってないがしろにしていいわけはない。市民は民間サービスと同等でストレスのないサービスを受けられるべきだ。庁内においては仕事の効率やエラーが減るメリットがある。一方で、データの改竄対策や費用対効果、誰1人取り残さないサービス提供をする必要もある。必ずしもトレードオフではないので、デジタルディバイド対策、ICTの利便性啓発をしながら生活水準を上げる。

 

協働・コミュニティ・学び

これからの市民生活が豊かになるかは協働がカギ。武蔵野市の行政サービスは他自治体と比べると高水準と聞く。更に市民の「こうしたい!」と意図を汲んだ事業を進めるには、行政と市民が協力しあう協働の形が最適だ。コミュニティが生まれるという副産物もある。武蔵野市では自治基本条例で協働を位置づけている。あとは実行するだけだ、と言うのは簡単でこれにはきっかけづくりが必要だ。武蔵野市では今のところ市民の中からの発案と行政各課から仕掛けてくるケースがある。一方、他自治体を見ると社会教育(生涯学習)をきっかけにしているケースもみられる。そう、プロのコーディネーター「社会教育士」がマネージメントする方法だ。学びをきっかけとしコミュニティ形成や協働にまで繋がる仕組みを構築できる。協働のきっかけづくりの方法はいくつあってもいい。コミュニティが希薄化し続けている地域としても一助となるのではないか。

 

新たなコミュニティづくり

武蔵野市のコミュニティ政策(コミュニティ構想)では「コミュニティは市民自身が(中略)長期にわたっておしすすめていくもの」とあるが、地域コミュニティは醸成ではなく希薄化がゆっくり進んでいるのではないだろうか。コミュニティ協議会はコミセンの管理・運営が忙しく、自主三原則(自主参加・自主企画・自主運営)によるコミュニティづくりまで手が回らない状態になってはいないか。2014年には市民による話し合いの場「地域フォーラム」が提言されたり、2017年〜2021年にかけてコミュニティ未来塾が開催された。自主三原則の目的を再確認し、他地域でのコミュニティづくりも参考にし新しいコミュニティづくりを考えたい。

もう一つ地域コミュニティの入り口の一つだったPTAへの参加の仕方が変わってきている。活動しやすいPTAのために環境整備(Wi-Fiの利用や、教員の働き方との関係)などの支援とともに、PTA→地域コミュニティという担い手の想定を変えていくべき。

 

防災・減災・発災対応

山もなく大きな川もなく海からも遠い武蔵野市は地の利により比較的災害に強いところと言えるが、いつか来る災害には備えないといけない。基本は自助とし、発災時は共助で避難所運営や物資・情報の伝達をする。公助は発災前の自助啓発といつでも避難所を運営できるように準備すること(発災時にはインフラ復旧や救援物資が速やかに渡ることを優先して動いてもらうのは言わずもがな)。発災時は居合わせた誰でも避難所運営できるように、避難所(立ち上げ・運営・解散)訓練・シミュレーションをもとに初動マニュアルと運営マニュアルを作成・アップデートしなければいけない。避難所運営組織は集まった人で作り、避難所関係マニュアルの作成を準備組織と行政で行う。

 

歴史と生物多様性を意識した持続的な緑の保全

武蔵野市は玉川上水が貫き小さな緑と緑を繋ぎ大きな緑を作っている。そのため23区に接する市街地ながらも生物多様性の面でまだまだ可能性を秘めていると言える。かつては玉川上水にホタルがいたそうだ。これは市民の財産だ。幸い武蔵野市には江戸時代から続く雑木林が残っていたり、玉川上水、井の頭公園といったまとまった緑があり、持続可能な緑の保全を続けることができる。そういった歴史的・科学的な視点を持ち生物多様性を意識した保全をしていきたい。このことは、市民の生活を豊かにするし、学びにも活用できるし、管理コストの低減にもつながる。

 

気候変動対策

2050年ゼロカーボンシティを目指す武蔵野市、もうあと27年しかない。地球温暖化対策実行計画では2050年までのプランが示されて2018年(2013年スタート)で既に10%削減ができていると示されている。それからさらに5年経ってどういう状況だろうか。ゼロカーボンシティの実現が本当にいいのかは分からないが、未来を壊してまで温暖化ガスを排出し続けるわけにはいかない。持続可能な地球を未来にバトンタッチしなければいけない。
 

エコreゾートの活用

元ごみ処理施設跡地を利用して環境啓発をしている。施設の中にはものづくり工房があって、武蔵野市唯一のものづくりができる場所だ。物を捨てるところで物を産み出す機能があるのはすごく面白い。ところが、利用の制約があったり廃品利用へのこだわりから非常に使いづらいと感じている。最終的に環境啓発につながればよいのであって、間口は広く多くの人が来館できる場所になれないだろうか。また、中央コミセン隣にあったシルバー人材センターが移動しリサイクル事業はなくなった。3R(Reduce・Reuse・Recycle)をこの場で推進できないだろうか。もっともやる人がいなければ成り立たないことなのでそう勝手なことは言えないが。

 

ものづくり文化を醸成

最近の科学・技術の日本のおいてけぼりっぷりは見逃せない。また、同じ理系分野では多くのノーベル賞受賞者が指摘しているように基礎研究への資金削減についても大問題だ。ここからは完全に私見だが、日本の子どもたちがものづくりから離されているのも問題の根底にあるのではないかと考えている。「昔は…」という論法は好きではないが、本屋さんには工作の本がたくさんあったし、子どもたちは家のものを分解して怒られたり、たっぷり時間をかけて工作に没頭したり本を読みふけっていた。絵の具や塗料で怒られたこともあるかもしれない。家には厚紙などの廃材がありある程度工具も使えた。こういうことにエコreゾートを使えないだろうか。世界のMakerムーブメントはますます元気になっているのに対して「武蔵野市教育文化等総合施策大綱」でもものづくりは位置づけられていない。創作は元来誰もが楽しいはずで、この楽しい活力が新しい市民活動を産み出すという副産物もあるかもしれない。

 

市職員を応援しよう
当然ながら職員が楽しく働くと市はより良くなる。参画して、働いて、市がよくなって、市民が喜んで、職員も楽しい。こういう好循環が望ましい。そのために職員が挑戦できる空気を作り、そういう姿勢を評価できる価値観にアップデートするといい。失敗を引き算で評価していると萎縮して誰も挑戦できなくなって、結局損をするのは市民だ。職員を応援しよう。

 

議会・合意形成

最後に、国では相変わらず足の引っ張り合いやらパワーバランスやらなかなか前に進まない。また、SNSの普及からか知らず知らずの内にエコーチェンバーの中でしか意見が共有されない傾向が強まっているようだ。それにより合意形成から遠のき民主主義が多数決に頼ることになっていないだろうか。武蔵野市議会でときどき使われる主観でしかない是々非々(実際は真逆の専断偏頗)という考え方も一見意志が強く頼もしい印象があるが、見方を変えれば他人の意見は聞かないということと同じだ。合意形成しないで民主主義と言えるだろうか。武蔵野市政は市民の身近なところに直接影響がある。事実をふまえ論理的に中身のある議論し、そして各々の意見の目的を深掘りできるファシリテーションを機能させ、着実に市政を進めていこう。

※多数決型民主主義の考え方は分裂・対立を生みやすいのではないだろうか。

 

番外編:桜野小学校のえんぴつ山復活

2016年に取り壊された市立桜野小学校の「えんぴつ山」は地域の力で作られたそうだ。うちの子どももえんぴつ山でズボンを破いてきた一人だ。市民参加(参画と協働)が進むと市民活動と行政サービスの境い目が曖昧になってくる。どちらでやったらいいのか分からないが、いつかはえんぴつ山復活させたいとずっと思っている。卒業生がクラウドファンディングで作るというのもいいかもしれない。

香港の民主化を支持します。ミャンマーの民主化を支持します。ロシアも攻撃やめてください。